「水の音」

(「水の音」・本紙53×225cm・正筆展出品作品・2011)水の音に似て啼く鳥よ山ざくら松にまじれる深山の昼を

船の上に飼へる一つの鈴虫の鳴きしきるかな月青き海 

(若山牧水「海の声」より)


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われは海の声を愛す。

潮青かるが見ゆるもよし

見えざるもまたあしからじ、

遠くちかく、断えみ断えずみ、

その無限の声の不安おほきわが胸にかよふとき、

われはげに云ひがたき、

悲哀と慰籍とを覚えずんばあらず。

(「海の声」序文より)

*


牧水はその歌集に「海の声」と名を付け

その海の織りなす波の音を"無限の声"と言った。


自らの中にも絶え間なく響く海の音を

歌い上げるような

男性的な力強い情熱のある歌が続く。


それは共感と言うよりも

私にとっては自分にないもの、という憧れの対象であるような気がする。


*

憧れの人の憧れの言葉を

繰り返し繰り返し口ずさみながら

書いていった作品。

Atelierすゞり

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