「雪のメタモルフォーゼ」


(「雪のメタモルフォーゼ」・額サイズ45×35cm・3枚組・2008)


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古代、雪という文字は
その中に羽を宿していた。

遙か昔の人々は
白く浄く空から舞い来るそれを
天からの羽だと言ったのだ。

それならば
いま私たちの眼前に降るこの雪は
何を失い、何を得ながら
一片一片重なってゆくのだろうか。


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古代の「雪」という文字は、
あめかんむりの古い形の下に「羽」という形を書く。
"空から降ってくる白い羽"
古代の人々は雪をみてそう思い、そう表現したということなのだろう。

現代の「雪」という文字はそれとは違ったルーツを持つ。
長い歴史の中で、音と文字と意味の入れ替わりが起こることがある。
古い「雪」の持っていたストーリーはどこかに失われ、
今の私たちは別の「雪」を手に入れた。

雪というモチーフを表現しようとするとき、
古代文字の「雪」は最もその実体のイメージを喚起する。

雪のメタモルフォーゼ。

古代の雪と今私たちの眼前に降る雪は、
いったい何が変わってしまったというのか。





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