カレル・チャペック『園芸家12カ月』

園芸家12カ月改版
著者:カレル・チャペック
価格:534円(税込、送料込)
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かなりのロングセラー作品なので名前は知っていたのだけど、読んだことがなかった作品。タイトル通り、園芸書は園芸書なのだけど、どちらかというと、「趣味人の地味なコメディ」だと言う方が私にはしっくり来る感じです。誇張表現が絶妙だというのは本当に筆力の高いオタクならではで、抱腹絶倒という類の面白さではないけど、要所要所でニヤニヤしちゃう。何より、訳者の小松太郎さんと作者のカレル・チャペックさんの距離感が面白すぎてつっこみどころ満載です。よく、翻訳物には【注】が付してあるけれど、その【注】で笑えるのはなかなか。【注】というよりも本編に差し込むわけにはいかなかった、小松さん本人のぼやきだとか感想だとか経験だとかが多くて、【注】の使い方ってこんなんありかー(笑)という感じ。もう、こうなってくると、訳の「よしきた!」とか「ちくしょう!」とかもどこまでがカレル本人の言葉なのか怪しい気がしてきます。なんて言うのかな。ジャンルは違えど、白川静の『字統』とかもっと一般的に行くと『新明解国語事典』が好きな人も、これ好きよ、きっと。本物の園芸家は、花を育ててるんじゃなくて、土を育ててる。そーね。何となく耳障りのいいような、格好良いような言葉を並べていても、なんとなくみてくれだけを整えていても、土壌になる勉強が不足してるとそれはなんだか張りぼてになってしまう。土壌を作ることに喜びを見いだせる人こそが本物のマニアというかオタクというか。ふふふ。私、この園芸家みたいな人、けっこう、どストライクで好みです。

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