道しるべ
先日、師である岡嶋華笠先生のご自宅へお稽古に伺ったときのこと。「若い頃の作品が出てきたの」と、一本の巻子作品を拝見しました。くるくると紐解くと、秋の歌が連なっていて、それは、先生がずっとご自身の基盤としてこられた関戸本古今和歌集の佇まい。「もうね、ここまで関戸調だと、創作と言うよりは倣書かもね」と、ふふふと笑っておられましたが、奥付を見てびっくり。先生が旧姓の頃の作品。・・・・ということは、20歳くらいの時のもの。私が20歳のころは、かなのお稽古を初めて2年目。まだよたよたした線で、お手本を矯めつ眇めつしながら「かなかもしれない何か」を書いていたような状態。関戸の続編ではないかと思えるようなその作品を生む先生の基礎力はこのときすでにこんなレベルだったのだなぁと、本当に刺激を受けました。写経を学びたいと言えば、若い頃からどっさりと書いてこられた手本を惜しみなく出してくださったりこんな作品を作りたいと言えば参考になるような今の作品、昔の作品を見せてくださったり、そのお陰でいろんな事を学べています。当時のびっくりエピソードも出てきたり(笑)そして、そのたびに、師の若い頃からの膨大な積み上げを目の当たりにして、驚いたり、感激したり、そして、何より刺激を頂いています。師のしてきたことは、何よりの道しるべ。私自身はゆっくりだし、よくつまづくし、道草するし、忘れ物もするし(笑)でも、道しるべを見失わないように、なんとか歩いているつもりです。ここ数年、お稽古の度に歌一首を創作して持って行き、それを先生が添削してくださって、また次のお稽古で一首、次にまた一首と、先生とのやりとりを繰り返しています。一年間で、折り帖の裏表がちょうどいっぱいになるくらい。そしてそのやりとりを基礎に、師と同じ関戸本古今集を傍らにして、自身の巻子作品の創作をこつこつ続けています。先生の若いときの積み上げに、基礎力に、追いつきたい、追いつきたい。
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