「祇園精舎」
数年をかけて水の流れをテーマにいくつかの作品を作ってきました。その水はふるさとの「平家谷」を発し谷にまつわる物語や、谷に生う椿を乗せて時に冬の寒さに凍り、時に泡沫を成しながら穏やかに瀬戸内海へと注ぐ水でした。私自身の手は一つの媒介にすぎずふるさとの物語が自ら一つ一つ編み上がるように作品が生まれてきたのだと思います。どうかご覧になる方にふるさとの水の音が届きますように。
(「祇園精舎」・75×150cm×2枚組・2013)祇園精舎の鐘の聲諸行無常の響あり沙羅双樹の花の色盛者必衰のことわりをあらはす奢れる人も久しからず只春の夜の夢のごとしたけき者も遂にはほろびぬ偏に風の前の塵に同じ(『平家物語』)***始まりは平家の物語。*平家物語の冒頭を作品にしました。全面に銀箔を施し、岩絵の具で沙羅双樹(夏椿)と藪椿とを描いています。天地で呼応する構図で。源平の色さながらに紅白の花を対比させて。絵の骨書きと文字部分に用いたのは、絵にちなんで椿油煙墨。落款印には平家の揚羽紋を刻しました。箔貼り、日本画、書、雅印と作品の全てに自ら関わって完成した作品です。
0コメント