「葉ざくら」
(「葉ざくら」・本紙53×225cm・正筆展出品作品・2012)葉ざくらよ雨間の雫地をうてり花どき過ぎてかくはしづけき 木下利玄***桜はさかりの時期を過ぎ、雨が降る度に残る花びらを落として行く。雨の止んだ一時の合間に、葉桜となったその枝から雫がぽたりと地面を打つ。その小さな音こそが、静寂を教えてくれる。静寂というのは、ただ音がない状態ではなく、ともすると気付かないような小さな音が耳に届くことではじめてそれと実感できる物なのかもしれない。「かくはしづけき」そこには静寂への感動がある。"かくは"という言葉はだからこそ生まれる。ただし「静かだ」と発することそのものはこの歌の要ではなく、「何に」静かさを感じたのかということこそが木下利玄という歌人の一級の所業なのだと思う。*「第64回 正筆展」に出品した作品です。お世話になっている先生から頂いたもったいなくて使えないような気持ちのする筆を使って仕上げた作品です。やはり、書で受けた恩は精一杯作品を書くことでお返しすることが一番なのだと思って。
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