「水は泡沫を成し滄海へ出づ」
(「水は泡沫(ほうまつ)を成し滄海(そうかい)へ出づ」・軸作品+立体・2012)***水という文字は、水の流れる様から生まれたという。水という文字は流れを成し、その水は流れの中で泡沫を結ぶ。泡沫は、生まれては消え、消えては生まれ、生成と消滅を繰り返しながら流れて行き、やがて大海原へと注ぐ。ここ鞆の浦は、水が海へと注ぐまさにその場所。遠く異国へと続く、まさにその場所。***「鞆の浦deアート」展のために構想を練った作品です。福山の誇る歴史的港町「鞆の浦」と、かつてそこに訪れた"朝鮮通信使"を背景に現代の備後のアーティストと韓国のアーティストとが現代版朝鮮通信使さながら鞆の浦を一大アートスポットに変える展覧会。そういう意味合いと、前回の展覧会作品「水のメタモルフォーゼ」からの流れを汲む形にしたかった作品です。掛け軸を含む、立体すべてに「水」という文字を書き、水が泡をなすように立体化しています。その泡の流れてゆく方向は、鞆の浦の海へ向かって。・・・行く川のながれは絶えずして しかも本の水にあらずよどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし・・・かの「方丈記」の冒頭文にもあるように水は泡沫を形作って流れていくのです。ただし、その泡沫は儚いだけのものではないのかもしれません。水の流れは大海原へと続きます。そして、遙か外つ国(とつくに)までも。
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