「椿恋文 -文したためて-」





(「椿恋文-文したためて-」・25×36cm・2011)


故郷の椿生う谷には、かつて

平家の武将である平通盛と

その愛妾である小宰相局が隠れ住んでいました。


小宰相局は、屋島へと落ち延びていく途中

通盛が一ノ谷の合戦で命を落としたという知らせを聞き、

悲しみのあまり自らも海に身を投げたといいます。


『平家物語』や能『通盛』でも知られる二人の悲恋物語は

平家谷に伝わる恋物語そのもの。



*


平家の姫君がしたためた恋文を思い

墨を摺り、紙を広げ、筆を執る。

繊細で芯の強い線をと願いながら

白い唐草模様の唐紙に

椿に寄する恋の歌を。



*


川上は平氏の裔の住みぬらん

落ちて椿の遠く流るゝ

花弁に昔ながらの恋燃えて

世を捨てたるに何の陽炎


(『尼』漱石と虚子の俳体詩)

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