「椿恋文 -谷に咲く-」
(「椿恋文-谷に咲く-」・68.5×29cm・2011)
幼い頃よく遊んだ平家谷は
平家の隠れ里である故に、
源氏の色である白を遠ざけ
神社のしめ縄に吊す四手までも赤く、
その神社の境内にある
一抱えもある大きな藪椿は
毎年赤い花を無数に付けるのです。
赤い赤い椿の花は
見上げるとまるで我が身に降り注ぐようで
幼心にも胸が痛くなりました。
美しいものに対する「畏れ」を
私に教えてくれたのはあの椿なのかもしれません。
平家谷にはいま千本を越す椿の木があり
そこはまさに"椿の谷"なのですが
私にとって故郷の象徴は
あの一本の藪椿に他ならないのです。
*
赤い赤い椿の花を
紅の紙に墨一色で。
*
書作品と呼ぶには少し異端であるかもしれません。
ただ、私にとっては幼い頃から
"絵を描くこと"と"字を書くこと"の境界は
とても曖昧なものだったのです。
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