切継料紙飾り扇 「水 -seto-」
(「水-seto-」・切継料紙飾り扇・柄丈38cm 巾50cm・2010)
水という字は水の流れを表す形から生まれたという。
水の象形から文字へ。
その抽象化と省略の過程には
デザインという作業に近い感覚があるように思う。
抽象化されて生まれた文字に
再び水を含ませ
水の流れへ引き戻そうとする作業は
矛盾しているだろうか。
*
水は大きくうねり、流れていく。
瀬戸の海の流れのように。
時に沫をつくり、
時に渦をつくり
時に群青の光を孕みながら。
水が大きく扇の上を流れるとき、
切り継ぎの緑と青は
海に浮かぶ島々になる。
瀬戸の水。
それはふるさとの光景。
*
文字が意匠という要素をも含むとき
そこに物語が生まれはしないかと
そんな思いを抱きながら
私は水という文字を書く。
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