「サイダーの泡立ちて消ゆ夏の月」
(「サイダーの泡立ちて消ゆ夏の月」・51×33cm(本紙)軸装・個人蔵・2010)
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サイダーの泡立ちて消ゆ夏の月 山頭火
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水の中に無数の泡が浮かぶようなブルーの紙に出会う。
墨を落とす。
うん。やや滲みが強い。
しゅわっと水を受けたようなクセのある滲みかた。
そして、山頭火の句。
山頭火とは思わなかった意外な一句。
「消ゆ」のは、サイダーの泡なのか。
それとも夏の月なのか。
ひたすらに筆を動かしていると
夏の月がしゅわっと音を立てて消えてしまうような
幻想に引き込まれる。
明るい夏の日差しを連想しやすい"サイダー"の語が
夏の月と連なることによって
少し不思議で童話的な雰囲気すら感じた一句。
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床の間ではなく、玄関にというオーダーでしたので、
少し洒落感のある雰囲気に。
見て、読めて、楽しい調和体を使い、
かなの散らし書きを応用した空間構成で軽やかに。
表装は白色と水色の糸で織り上げられた紬の生地をベースに、
サイダーの語に合うような
レトロな古布で上下の一文字を。
軸先はクリアな淡水色の陶器を使い、
サイダーの一服を
夏らしい一幅で。
…なんて。
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