両の手に桃とさくらや草の餅




(「両の手に桃とさくらや草の餅」・14.8×10cm・2009)


*

"俳聖・松尾芭蕉"

誰がそう呼んだのだろう。

一句の中に季語が二つ、三つと存在することを「季重ね」という。
普通、季重ねをするとその句の焦点が定まらず、
なかなか良い句にはならない。


「両の手に桃とさくらや草の餅」


季語だらけのこの句を
芭蕉はいとも軽やかに詠み上げてしまった。

春の喜びを両手いっぱいに携えて、
さらには口いっぱいに頬ばって。


もともと戯れ歌である俳句に、
"聖"の称号など不要なのかもしれない。



*



一見、文字を綴るには賑やかすぎるかなと思うこの紙を、
この句だからこそ、使いたい。


Atelierすゞり

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