両の手に桃とさくらや草の餅
(「両の手に桃とさくらや草の餅」・14.8×10cm・2009)
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"俳聖・松尾芭蕉"
誰がそう呼んだのだろう。
一句の中に季語が二つ、三つと存在することを「季重ね」という。
普通、季重ねをするとその句の焦点が定まらず、
なかなか良い句にはならない。
「両の手に桃とさくらや草の餅」
季語だらけのこの句を
芭蕉はいとも軽やかに詠み上げてしまった。
春の喜びを両手いっぱいに携えて、
さらには口いっぱいに頬ばって。
もともと戯れ歌である俳句に、
"聖"の称号など不要なのかもしれない。
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一見、文字を綴るには賑やかすぎるかなと思うこの紙を、
この句だからこそ、使いたい。
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