伊坂幸太郎 『陽気なギャングは三つ数えろ』

嵐の夜というのは、どうして本が進むのだろう。雨の音が良いのか。雨の音で外界の気配が遮断されるのがいいのか。そんな夜には、想像力をフル稼働させるSFファンタジーの超大作が本命なのだけど、まずは準備運動に読んだ伊坂幸太郎 『陽気なギャングは三つ数えろ』。
この人の小説は、『アヒルと鴨のコインロッカー』とか『ゴールデンスランバー』とか(端から映画化もされてる)有名なものが多いけど、どれ読んでも評判に違わず、本当に外さない。優秀な建築家がいとも複雑な図面を描き上げるような緻密な伏線を張ってくる。そして、あまりに見事にそれを回収してみせるものだから、読んだ後の爽快感がスゴイのです。脳が喜ぶ感覚が味わえる。『陽気なギャング・・・』シリーズはこれが3作目。銀行強盗チームが主役と聞くと、ルパン3世のような派手で華やかなものを思うかも知れませんが、人数とか紅一点だとかチーム編成は似てるものの、もっと地味(笑)でも見事で、知的で、爽快。シリーズどこから読んでも、多分、その”伊坂流脳内麻薬”みたいなのは味わえると思います。活字、苦手なんだよなーとか、最近読んでないなーとか、そういう人に本を薦めるとしたら、私ならこのシリーズかな。字の少ない本を薦めるようなナンセンスなことは致しません(笑)私にとっても、読書スピードを上げるアクセルみたいな作家です。***さて。嵐の夜に本が進むなんて、悠長なこと言ってますが、なんだか福山市が全国ニュースで流れたそうで。大雨による水没映像。私のホーム沼隈半島も、外界への主たる4路線のうち、3路線までが土砂崩れで通行止め。(うちは無事ですが)危うく陸の孤島になるとこでした。ご心配頂いて、ほんとにほんとにありがとうございます。そんな中、その主要4路線以外の抜け道(狭いし危ない!)を通って仕事に行った父。「途中に、でっかい石が落ちてて、ゴロンとどかしたんだけど、軍手してすれば良かったなあ」だと。いや、そんな問題じゃないぞ。そして父が危ないぞーと言った同じ道をわざわざ通って外界へ出た母。「えっ!なんでこんな日に出たの?!」と聞いたら「だって、梅の実が買いたかったのよう。」だと。ああそう、そろそろ梅を漬ける時期だよねー。・・・じゃなくて!怒るより、うちの家族の能天気☀️さに、開いた口がふさがりません。もう!誰か怒ってー(T_T)

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