「青海波」
(「青海波」・H20×W40×D20cm/1Piece・鞆の浦deART展出品作・2014)かつて源平が激しく戦ったという瀬戸内の海は、その戦の荒々しさを忘れてしまったかのようにいつも穏やかに波寄せる海です。ゆるやかな弧を描いて規則的な波の形を繰り返す、日本の伝統文様「青海波(せいがいは)」。それをモチーフに作品をつくりました。青海波の文様から想起されるのは荒々しい海ではなく、どこまでも穏やかな海。それはまるで、瀬戸内の海。その海を作品として形にするために、選び取ったのは、写経用の深い紺の画仙紙とやはり写経用の金泥。かつて瀬戸内に繰り広げられた戦いとその波間に消えていった人々への祈りを込めて。紺と金との組合せには、「祈り」という言葉を色彩化したような厳粛さや荘厳さがあるように思うから。そして金泥で描いたのは「水」という古い字体です。水は、弧を描き、重なり、波を成します。幾重にも、幾重にも。そうして生まれる「青海波」。水底にかつての悲しい戦いを蔵しながら、どこまでも穏やかに続く瀬戸内の海。
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