白を施す 〈胡粉の色〉

日本の白は、美しい。指先を白く染めながら熱中していたもう一つの白は、胡粉の白。きめ細やかな白。とろけるように艶やかな白。それでいてどんな色にでも染まる白ではなく何ものにも染まらぬ、しなやかで強い白。   ***胡粉は貝殻を原料とした日本画の代表的な白色絵の具です。乳鉢できゅきゅっとするほど細かな粉に擂り、和膠をごく少量ずつ加えてまとめ、何度も鉢に叩き付け、膠と馴染ませ、指先で少しずつ少しずつ撫でるように水で溶く。今までに日本画以外の画材は顔彩・水彩・油絵・アクリル・色鉛筆などなどいろいろ使ってきたけれど、こんなにも丁寧に手間暇かけて作る白に初めて出会いました。舞妓さんの肌を描く時に使うという上品できめ細やかな白。胡粉の白は、水彩画のように紙を塗り残して作る白ではなく、油絵のように塗り重ねれば隠れてしまう白でもなくひとたびその白を塗れば、上から色を重ねても重ねても、浮かび上がってくるほどに、しなやかで強い白。どんな白より繊細なのにどんな白より強い。日本の女性の肌を描くのに、そんな白が使われていたんだなぁとじんわり感動を覚えます。今までに私が出会った数ある花の中で、最も美しい「白」を持つ花を描きたいなと思いました。その時にこんな白があることを嬉しいなと思います。そして、初めて扱うが故の不慣れや無知を悔しいなと思います。もしかしたらもっと美しく使えたかもしれないのにと。********************************「中村文美展 -水の音-」(9/18~9/23・ふくやま美術館)で作品をお目に掛けることができればと思っています。

Atelierすゞり

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