「赤い帽子(しゃっぽ)」
(「赤い帽子(しゃっぽ)」・額寸法 約85×145cm・正筆会岡山地区展出品作・2012)-大切な友人へ-********************************夜の夜なかに、この部屋へ、赤い帽子(シャッポ)でひよいと出て、こつそり算術やつておく、悧巧な小びとが一人やそこら、きつとどこぞにゐるだろよ。(金子みすゞ「ねがひ」より)********************************金子みすゞさんの詩から、書作品を作りました。いつか書きたいと思う詩を時々書き留めているノートの中からとっておきの詩を一篇。温かく柔らかな雰囲気を目指した字体でいろんな構成を試みながら何度も書き重ねてできました。ノスタルジックな雰囲気を出すために表具はレトロな趣の着物生地を。温かな友人家族の住む家にこの作品が馴染みますようにと願いを込めて。***誰かのことを思いながら、こういう作品を作るときが一番私らしい表現ができるような気がしています。技術を培うということは、自分が表現したいものを、独りよがりにならずどこまで相手に伝えられるかということ。そうして培ってきた技術を使って、誰か伝えたい人の為に、詩を選び、文字を練り、表具を考え、作品が生まれていくとき私は一番「書」をやっていてよかったと思えるのです。そして、もっともっと、表現の幅を広げる為の技術が必要だと実感するのです。
0コメント