原民喜『夏の花』

.ースベテアツタコトカ アリエタコトナノカパツト剥ギトツテシマツタ アトノセカイー.終戦の日に読む、原民喜『夏の花』。.原爆の日に、宮下奈都『羊と鋼の森』の中で出会った原民喜の文章。読書会で一緒の大好きなお姉さんがその時、同時に読んだと言った原民喜。こういう連鎖が起きる時には、それはきっと私にとって大切なこと。.描かれるのは凄惨な事柄であるけれど、使われる日本語は端正で柔らかで、語り口は粛々と淡々と。.怒りを伝えるのは怒りそのものではなく、哀しみを伝えるのは哀しみそのものではなくて。.本当に伝えるというのは、そのための表現が成し得ることだと思うのです。.表現者としての原民喜は、それを知っているから「書き遺さなくては」と思ったのでしょう。.炎天下に咲く、黄色の小さな花。名も知らぬ花。その日常のささやかな美しさが、そしてそれが失われたであろう哀しみが読後に愛おしく残る、稀有な戦争文学でした。.#読書記録#レトロワンピース

Atelierすゞり

美しい文字を。 美しい時間を。 美しい空間を。 The official website of Ayami NAKAMURA  [Atelier Suzuri]