2017年3月 一般手本

大学生の頃から愛用している万年筆は、母のお下がりのモンブラン。学生の頃はよく分からずに使っていたけれど、師匠がよく「なんだか、色も線も綺麗に見えるわ」と言ってくださってて嬉しかったのをいまでも手本を書きながら思い出したりしています。ちなみに、うちは中学生以上のペン字は全員万年筆です。
天つ空青海原も一つにてつらなる星か漁(いさ)りする火か(正岡子規)いつも子どものばかりアップしちゃうのでたまには大人の手本。2枚は全く同じ歌です。かな書はとても柔軟で絵画的。ここのところずっと、かな書の課題はそれぞれ複数パターンの手本を準備しています。美しく伝えるために、字の選び方も、散らし方も、無限の可能性があります。それは、世界に類を見ない、日本独自の表記方法。・・・・なんだけど、よく考えたら手本の種類が増えるってことでしょ。なんでもゆっくりの私にとっては時間がかかってしょーがない(笑)
こころよく春のねむりをむさぼれる目にやはらかき庭の草かな(石川啄木) ***教える側が、生徒にしてあげられることというのは実は限られていて、いろんな事をしてあげたくても、誰かだけを特別扱いというのは難しい。私の判断基準は、1人にしてあげたいと思ったことが、100人にしてあげられるかどうか。そういう意味では、自分の技術や表現力を鍛えて、なるべく良い手本を渡したいと思うことは生徒全員に対して提供できる大切なこと。師匠から受け取って、生徒へと渡す、大切なこと。

Atelierすゞり

美しい文字を。 美しい時間を。 美しい空間を。 The official website of Ayami NAKAMURA  [Atelier Suzuri]