「ところてん逆しまに銀河三千尺」

(「ところてん逆しまに銀河三千尺」・148×100mm・2016)ところてん逆しまに銀河三千尺  蕪村***今年の夏の挨拶状には蕪村のところてんの句を。"ところてん"に"銀河三千尺"とは、何と大きく出たことか。器の中につるりきらりと涼しげなところてんをまるで三千尺の銀河のようだと言い切ってしまう。この辺り、俳句のおもしろみをフルパワーで感じられる句ではないかなと思います。銀河三千尺というと、ほぼ間違いなく李白の詩を下敷きにしているのでしょう。日照香炉生紫烟    (日は香炉を照らし紫烟を生ず)       遥看瀑布挂長川   (遥かに看る瀑布の長川を挂くるを)     飛流直下三千尺   (飛流直下三千尺)                疑是銀河落九天   (疑ふらくは是れ銀河の九天より落つるかと)(李白「望廬山瀑布」)滝が三千尺もの長さで流れ落ちるといい、まるで銀河が天の彼方から落ちてきたようだという。この詩に於いてですら滝が"三千尺"とは大いなる誇張であり、"銀河"が落ちてきたようだというのも壮大なる比喩なのですが、それを"ところてん"に使うのだから蕪村には恐れ入ってしまう。これだけ暑い夏には、銀河三千尺をつるりつるりと飲み込んでみるといい。可笑しくも涼しい気分になる一句。***青い切り継ぎ文様の紙を、銀河に見立てて涼しげに。ところてんから、高く九天の銀河へと飛躍するような構成で。

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