「けやきよりすゞめこぼるゝ寒さかな」
(「けやきよりすゞめこぼるゝ寒さかな」・148×100mm・2015)*欅より雀こぼるゝ寒さかな 野村喜舟***この冬に選んだのは野村喜舟の欅の句。見上げるような大木になる欅。神住むかと思わせるその佇まい。夏にたっぷりと繁った葉は、秋には見事に紅葉し、冬になるときれいさっぱりと散ってしまいます。そして現れるのは、美しく放射状に広がる見事な枝振り。冬の欅はその枝振りの端正さがなにより印象的ですがそこから雀が舞い降りてくる様子に喜舟は冬の寒さを表すのです。「こぼるゝ」この句の肝は、この言葉。欅の大きく美しい枝から、こぼれるように降りてくる小さな雀。冬の透明な空気の中で泰然と動かぬ大きな命。そして、ぽろりぽろりと転がるように動く、小さないのち。その存在の対比が生み出す美しい余白と広がり。*けやきの文字をその木の姿さながらに高く配し、そこからぽろりとこぼれるように降りてくる小さな雀の姿のように「るゝ」の文字を。言葉の流れに逆らわぬ、自然な構成を心がけて。深いブラウンの紙に金泥で柔らかな光を添えて。
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